帽子屋

『自分の機嫌は自分で取らなければならない』なんと手垢の付いた言葉だろう、しかしながらこれほど大切で共感しうる言葉もそうそうにない。

 

実に退屈な体調の話題が続いて申し訳ないが、また肌の話だ。

腫れや赤みはひいたが今度は荒れがやってきた。忙しい皮膚である。顔にステロイドを塗るにあたってインターネットで色々調べていたところ、ステロイドで面皰が出来ることがあると書いてあった。3日間の投薬を終えた肌にまあまあ大量に発生したそれは思春期を彷彿とさせ、気分を害す。それだけならまだ容貌だけの問題に留まるのだが、治りかけの皮膚はうまく皮脂を分泌できていないらしく冬の乾いた風がこたえた。

辛抱堪らずまたも皮膚科に頭を下げた。受付に今月初めてなら保険証を提示しろと言われ、先週が1月末であったことを忘れていたわたしは「今月始めてじゃないです」と大嘘をつき受付の女性を混乱させる始末。

塗り薬と10日分の飲み薬を処方されて訳が分からなくなった。盛りの頃は3日分で、治りかけの頃は10日分とは何事だろうと。前の塗り薬が残っているのは使っていいのか、と尋ねようとしたところ“使って”辺りで「駄目です」と制された。制され料600円。

 

少し遡るが、前回フレンチトーストを食べに行った際にどうやらキャッシュカードを落としていた。ということに気づいたのが翌日の日曜日の昼過ぎである。

高槻で『叩き上げ』という大喜利会に光栄にもお呼ばれされたため、黒いマスクの下に面皰面とにやけ顔を隠して赴いた。そこでお茶でも買おうかと財布を開けたらなんとキャッシュカードだけ無いのである。すぐさま電話をしたら、5分くらいドロドロした保留音に不安を煽られながらもフレンチトーストの店の近くでお金を下ろしたその銀行で預かってくれているとのことだった。

その緊張と緩和が祟って大喜利の回答はロクなものではなかったが、会場近くのピラフも美味しかったし沢山アンケートも書いたしトータルでいい日だった。翌日も早いので途中で帰ってしまったことだけ申し訳ない。

 

さて冒頭の話に戻るのだが、顔に何か不調が起こるとメンタルに重大な影響を及ぼす。元々自分の顔に自信があるわけではないが、こうも荒れていると自信が途端に無くなってしまい、出勤ですら苦痛である。髪も伸びてきたが切りたくない。コールタールの海に自室を支配されたようなそんな気持ちになり、病院に行った日は直ぐに寝た。

起きた。9時だ。優雅に朝風呂を浴びながら洗濯機を働かせ、もらった薬を飲み塗り、カードを預かってくれている銀行へと行く準備を整える。化粧が出来ないのが辛いが、眼鏡を外してコンタクトレンズを入れると「そんなに大したことないじゃないか」という気分になり、お気に入りのスニーカーを履いて溜まっていたゴミも出した。本も一冊持って出た。

 

雨は歩いていると直ぐに止んだ、こうなると傘は邪魔だが雨よりかは良い。銀行で番号札をもらって大人しく待つ。先の男性が呼ばれた時にカバンを忘れていることを行員に指摘された時の「あちゃー」という顔。そのような小さいことが全て心の中にプラスとして加算され、ああ今ちいさい躁状態なのだなと思った。ディズニーのショートアニメが目に入り泣きそうにもなった。

 

無事に手続きを終え、阪堺電車に飛び乗り住吉へ。阪堺電車は2回くらいしか使ったことがないので乗る時にICカードのタッチを忘れ、更に降車ドアも分からず狭い一輌の電車を狼狽した挙句運転手に白手袋のみで案内されてしまった。屈辱だ。白手袋に「やれやれ」と書いてあったように思う。

 

みどりのひつじでカレーを食べた。喫茶店で出るカレーでは無いだろ、と一瞬で完食してしまった。おしゃれなカフェでカレーを一瞬で完食するのは恥ずかしい。壁際の席に座って良かった。

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ベリーのチーズタルトとコーヒー。サイフォンで淹れているらしい。普段50円の缶コーヒーしか飲んでないので明確に美味しかった。用意された席で本を読むこと2時間弱。

 

天王寺に戻りサンマルクカフェで作業。あの店で書きものをするのは何だか違うなと判断したため。したため認め。隣に泣いている男児とその母親がいて泣き声やだなあと思ってたら、母親の「パン食べる?」の一声で事態が収束。パンすごい。

 

最後まで天王寺はよくわかんないな、でもご機嫌にさせてもらった、いい街なんだろうな、梅田でうどんを啜り偉そうに帰宅。本を読み終える。何の本だったかというと『のほほん雑記帳/大槻ケンヂ』である。中学生時分には家にあった記憶があるのだが、わたしときたら一向に読了せず今まで来てしまったため今日一日で読み切ってしまおうと踏み切ったわけだ。切ってばっかりだな。エッセイを読むのが好きだ。そして驚くことに筆者がこれを著したのが26歳の頃だという。初版1992年。生まれ年。ぞぞっとした。