正しくて色褪せない

やめろ。このタイミングでブログ更新するな。浮かれてるけどひと段落したタイミングで更新するのいっとう気持ち悪いやろ、そもそも最近何か出来事があった時しか書いてない、日常を綴れ、謝れ、謝りたくない、こんばんは。常に船頭多くして船山に登ってます。インサイドヘッドプロブレムなので良いの。毎回導入がダルすぎて申し訳ない。謝った。

 

関東の猛者が集う大喜利大会ことEOTの第7章に参加した。やっぱりそのこと書くんかいと思った諸兄姉、いつも見てくれてありがとう。

 

そもそも第7章が開催されそれがタッグトーナメントだと聞いた時にはかなり対岸の大喜利といった感じで捉えていた。一応日時見るか、まあ行けないことはないな、と。しかし過去に出たEOTのあの熱狂、あの演出、関西では味わえない称賛(これは本当にこちら側の問題)、全て憶えている。第4章で帰りの新幹線逃して仕事あるのに朝帰りになってしまったこともついでに思い出す。つらい。しかしその辛さより大喜利やりたい!という気持ちが勝った。だが問題はタッグトーナメントという点である。単身ではいくら前のめりになろうともそれは叶わないのだ。となると誰か誘う。エントリーが始まる時間だ。Twitterにはその情報が放流された稚魚のようにつらつらと流れている。今回サーバー持ってるのかすごいな、と思いながら1人の男のツイートが目に留まった。

吉永さん。

わたしと同い年で、他にない大喜利をするのでかなり好きなプレーヤーの1人(プレーヤーて!)の彼が、何と余っている。拗ねている。以前一撃リローデッドという大喜利大会も体調不良でキャンセルされていた。今回もそうかもしれない、なるほどそりゃお互い様だ。というかまだまだ感染症蔓延る中東京に絶対行ける保証などない。いろいろ考えてDMを送った。すぐ返事来た。

“お互い何かあればすぐキャンセルしましょう”という誓いを立て、エントリーフォームに辿り着いた。個人名は入れた。意気込みは端折った。チーム名を考えなくては。こういう時は相手をdigるんや、と軽薄な頭が吉永さんのTLを眺めると『俺は家の中でもイヤホンしてチャットモンチー聴いてた』というツイートが目に飛び込んできた。情景が目に浮かぶなと思いつつチャットモンチーの曲名を漁る。全然知らない。カタカナの長いやつとかから取ったりしても可愛いな、とか思っていたら『染まるよ』という曲を見つけた。これだ。文字列を見た瞬間これ以外は考えられなくなった。わたしは別窓をそっと閉じてエントリーを完了させた。すぐに反映されるエントリー情報に安堵していたら9mmとか好きそうって言われててこいつ何やねんと思った。9mmちょっと好きだったら9mm好きそうってあんま言われたくない。

 

慣れた手つきで夜行バス+銭湯のプラン、帰りの新幹線の手配も済ませる。新幹線は自由席にした。前日は友人の新居祝いと称した宅飲みにお邪魔し、昼過ぎから呑んでいるので全員が出来上がってる中、下戸はほろ酔いをちぴちぴ舐めた。全く酔わなかった。酔っていても応援をしてくれる良い友人を持った。

夜行バスまでの時間がちょっと余裕なさげだったので物怖じせずにタクシーを使う。本当に時間の管理とかもっとちゃんとできるようになりたい。タクシーの運ちゃんが周り道を使ったので途中でメーターが止まった。良いタクシー。

 

マジで夜行バスで一瞬で寝たので車中のことは触れることは何もない、強いていうなら毎回脚がビバンダムくらい浮腫むので加圧レギンスを履いたところ全く効果が無かったことである。いいんですよこの後風呂入るから。いつものカプセルホテルに行く、その前にモーニング大好きなので弾む足取りで寄り道。喫茶タイムス、美味しゅうございました。

風呂にゆっくり浸かり、せっかくなのでサウナでもと思いサウナと水風呂を往復した。時間が短いため整うことはない。ただ前日酔った友人の一人が「大喜利勝つためにサウナ行きなさい」と言われたのを思い出しただけである。少しかいた汗を全部流した。

誰よりも凛とした顔で化粧台と対峙する。いつも東京で大喜利するとき女の格好しようか男っぽい格好しようかでめちゃくちゃに迷う。誰も見てないのに。結果大体後者に落ち着いてるのでいつかはエレガントに行きたいわね、と思いながらパーマの残る髪に雑にオイルとバームを染み込ませた。可愛い女は沢山いるからなあ。

 

カプセルホテルを出てすぐにキャッチがいた。朝の9時だぞ。時間ある?の問いに無いっす!と即レス。即レスの理由はもちろん昼食である。モーニング食べてさほど時間経ってないのでは?などという問い掛けはよしていただきたい。東京でしか食えないもの食いに来たんだ。エピタフカレーへ。少し並んでいることが二の足を踏ませたが、さしたることはないと判断。英断。カレーはあいがけにラッシーのセットをオーダー。見かけより辛い。ラッシーは英断。舌鼓をぽこぽこ鳴らし、期待に胸は躍り、電車は高円寺へと向かい。

 

もう少し余裕を持って高円寺などそぞろ歩こうかしらん、などと思っていたのだが案の定無理だった。自分で思っておきながら「案の定無理だった」なんて言わないでほしい。会場が高校生のとき定期演奏会やったホールくらいデカくてたじろぐ。寒さの夏でもないのに、寧ろ日照りの春というくらいのお日柄におろおろ歩く羽目に。そこにはいつもと何ら変わりない吉永さんがいた。それだけで結構安心した。ホールは本当にここで大喜利の大会するのかと言うくらい立派でシートは真っ赤でどこ座っていいか分からなくてまたもおろおろしてしまう。こんな奴がドクターマーチン履いていいわけがない。とりあえず通路近い席に座ったら前にキルヒホッフさんがいて和やかに接してくれた。ようやく胸を撫で下ろす。鞄の中のラムネをすがる思いで食べた。

 

「Aブロックになったりしたら、嫌ですねえ」という2人の願い虚しくAブロックに呼ばれてしまった。どういうお題だったら行く、とかそういうのありますか?と聞かれたので画像お題が不得手だと伝えた。決まり事はひとつだけ。正直どこに入っても強い人たちがうじゃうじゃいるので組合せは気にしないようにしていたのだが、まだ羊狩りさんが部族の方々に舐められていた余韻の残るステージで大喜利が出来るのかという不安もあった。審査員が決定した瞬間、吉永さんが喜ぶのが見えた。どこにウケるか分かってるのってすごい。

予選5問のうち2問回答したのだがほぼ手応えがなく、吉永さんがウケているのも遠い出来事のように感じた、5問目で【画像お題】というヒントがはっきり出たのがまるで我々の胸中を見透かしているようで怖かったがお陰でスムーズに吉永さんをけしかけることができた。明らかに加点式の回答の仕方をしている。細い左腕が忙しなく動いていた。

後半の審査に選ばれた。サイリウムが全然折れなくて星野流人さんに折ってもらった。マーチン脱げや。特等席で答えが飛び交うのは迫力があったが、その分精神的疲労も少なからずあり、集計中の休憩で近いカフェを検索してカフェラテのケーキとアップルチャイとやらを購入した。インスタの写真の邪魔にならないように逃げる柄シャツ。アップルチャイは思ったより甘くなかった。

 

戻るなり申し訳ない気持ちで右に座るタッグ相手の横顔を見る。ある程度計算したんですけどね、と言う彼とは目線が合わなかった。合わせなかったのかもしれない。画面が暗くなり、無機質な空欄が投影される。前半ブロックの1位から発表、68点。ほう、まあ素晴らしいことですねえと思う。浮かび上がった文字は“染まるよ”だった。一刹那あり、あ、そういや染まるよって名前で出たな、えっ?などの細かい思慮が大きな喜びに呑み込まれた。無論自分の手柄では無い、身に覚えが無さすぎて結果にちょっと憤りすら抱いた。吉永さんと向かい合い、ハイタッチをした。させた。あとは各方向から聴こえる様々な歓声に耳を澄まし、あとで呼ばれる口上に期待を膨らませる幸せなひと時だった。後から予算のデータを見たら本当に吉永さんがEOTの歴史的にも大活躍をしており、誘って本当に良かったと思った。

本戦進出者は動画に用いる写真撮影がある。それを撮る間に警備員さんや東堂さんとお話が出来たのが嬉しかった。写真は2人とも直立で撮ってもらった。ここで初めて吉永さんの前髪がめちゃくちゃな角度であることに気づいた。

 

本戦、我々は所謂シードであるため数試合観戦に徹する。この試合で勝った方が次当たるんですよね、などやり取りがあった。謹製さんとおしださん。予選でも当たった2人である。謹製さんが「保存さんまた本戦で当たりましたね」と言ってくださるまでそれに気づかず己を恥じた。緊張するとダメになる、ならどうしたらいい、期待に応えたい、など心の中が騒がしく口上をうまく聴き取れなかった。背筋を伸ばして歩くことだけで精一杯。さっきと違って2人掛けで机に向かう。客席は当然だがさっきよりも埋まっている。ワクワクして変な座り方になった。

本戦を2回も勝ち抜いた。クソバカガッツポーズを2回もとっており、それがしっかり撮られており非常に恥ずかしい。お前の力でそこおるわけちゃうねんぞ。すいません。あまりに不遜なのでお辞儀だけきちんとするなど。そして決勝、予選でも本戦でも本当に面白かったお2人との対決。でもこっちには吉永がいる、と勝手に思いながら登壇した。意気込みでヒールみたいなこと言ってたの全部カットしてくれないかな。そういうこと言うから準優勝になるんやで。それさえ無かったら、とかいうたらればの話は無粋なのでここには載せないが、もっと強い回答を出せたらなとうんざりするほど考えた。王者は笑ったのちに泣いていた。そのどっちともつかない顔でわたしは客席を見回した。

 

終わってからかなり可及的速やかに出ねばならず、あわただしくそこを後にした。千代園ジャンクションさんなど、沢山の方が自分に対しても暖かい感想を述べてくださり後ろ髪が無くなるかと思った。早歩きしながら乗り換え案内に東京駅までの電車を調べ、安堵しながら乗り継ぐと、めちゃくちゃな角度の前髪が照れ笑いしながら乗っていて笑ってしまった。