痛みの犬

また、学生時代の夢を見る。眠りが浅いとこうなることは百も承知なので起きて「ああ、浅かったのだな」と思うだけ。心の中では高校を留年し続けているのかもしれない。弟(3留)を笑っていられない。

童貞期間が久しかった知人曰く、形だけ女を抱けたとて“心の童貞”というものがあるらしい。寧ろ一度だけ抱いたという経験が心に引っかかり続け次に進めないといった話を聞いた。初めては好きな人と!というヴァージニティーは別に女の常套句というわけではないのである、と。童貞ではないが非常に沁みた。

 

うまく寝られない日々。これだけ書くと語弊もありいらぬ心配を招きそうだが、『就業中ねむねむ→必死のパッチで終わらすもねむねむ→今すぐ横になりたいと家に着いた瞬間寝る→夜中に起きる→寝られずそのまま起きておく(若しくは1時間くらい寝る)→就業中ねむねむ』の最悪のルーティンライフワークが出来てしまうのである。お察しの通り日中何も手につかない。肯定感の8割は職場で得られるのだがその職場でも危うくなっており、これは非常に良くない。だってみんな夜日付変わるくらいまでは余裕で起きてるんだもの!何で先に寝なあかんのよ、2時起きだからである。さみしんぼか?

 

さみしんぼらしいので“事務所所属おめでとう、打ち上げおらんかったから祝ったるわ”という実にもっともらしく高尚な理由でパルボロイン仲口と飲みに行った。ピザの切り分け方でお互いの育ちを褒め合ったりして意義のある時間だった。「女子が喜ぶ店が嬉しい」と言われたし、実際全部めちゃくちゃ楽しそうに食べてくれたのでまた誘おっと。

 

漫才やりたい。

 

歯医者に行くことにした、もんどりうつような激痛などあったわけではないが墨汁が滲んでいくような薄ら暗い痛みが時々する。した。ので。機嫌が比較的良かったのでちゃんと電話予約をした。何度やっても電話予約というものは緊張する。飯屋でも病院でも。

財布に金をリフィルして向かう、中々予約が入る人気病院らしい。食べログなら3.6相当といったところか。初診の受付表にあれこれ書いて待機。

治療室にて腰かけるとホームページで見たおじさんが出てきて「ホームページで見たおじさんだ!」と思った。すでに口内のプライバシーを失っていたので思うだけに留めたが。口の中を、いや、口の中だけに舐め回すようにチェックされC1だのC2だの健全だの言われた、無学の頭脳でも理解できる程には良くない状態であるらしい。撮影もされた。良くないことが視覚からも伝わった。

歯石除去をしてもらう。3〜40分掛かりますとのこと、承諾しつつも思い出したのは実家の近くにあった歯医者。予約なしで来てくださいが謳い文句、時折手袋も無しに素手で歯を弄られることもあったが安いので時たま行っていた、あそこの歯科衛生士さんは10分くらいで終わらせていたのだがどういうことなの?と思い出をC2で噛み締めながらいざ尋常に除去。

わたしと付き合いの長い人にはわたしのスパイスカレー好き、ひいては辛いもの好きについては説明も野暮だと思われるが、まあ何が言いたいかというと“辛さは痛覚“(スレッジハンマーがこんな漫才してたな)であり、“辛さに強い者は口内の多少の痛みにも強い”ということである。そしてさらに思い出すのは幼少期に定期テストが如く母による歯磨きが行われたのだが、多少歯茎が腫れていた場合「悪い血を出したらなあかん」という考えの元に患部を執拗にブラッシングされたGUM味の思い出である。力こそ抜いてあったが回数がすごかった。高橋名人も目を見張る速さであった。蛇足だが癖(へき)的に因果を感じるので脳が「この痛みは快方へ向かう痛み」と勝手に解釈して耐えられるという理由もあった。今こじつけた。

鉄味の嗽を数回、何故か歯茎のマッサージというものも施された。また明日行っても良いらしい。明日行く。